全般性不安障害(GAD)
全般性不安障害(Generalized Anxiety Disorder: GAD)について
いしかわ心療・神経クリニック 院長 石川 博基
女性、結婚歴あり、専業主婦、収入はやや低め、都会在住・・・これがアメリカの研究では全般性不安障害(以下GADと略)患者さんの典型的パターンだそうです。
ではGADの診断基準は?というと
まずは6ヶ月間以上という比較的長期の過剰な不安や心配(将来を予想した不安)が大きな特徴です。また以下の6つの項目のうち3つ以上を伴っていることを必要とします。
- 落ち着きのなさ、または緊張感、または過敏
- 疲労しやすいこと
- 集中力の低下、または心の空白があること
- イライラし易い
- 筋肉の緊張
- 不眠症(寝つきが悪い、途中で目が覚める、熟睡感がない)
以前より不安神経症と呼ばれていたものがあります。これには慢性の不安障害と急性の不安障害が混在していました。1980年代にパニック障害というものが不安神経症の中から分離されました。パニック障害とは急性のパニック発作と、その発作がまた起きるのではないかという不安を特徴とする障害であり、クラインという人が「急性の不安障害にイミプラミン(抗うつ薬)が有効である一群がある」と言いこれをパニック障害としました。
ところで本題のGADですが、当初は不安神経症の中からパニック障害を除いたものをGADとされていました。つまり残りものだったのです。1990年代になって不安障害の整理がもう少し進みました。一時(今も?)話題になったPTSD(外傷後ストレス障害)、強迫性障害、パニック障害、社会恐怖などと、全般性不安障害(GAD)です。つまりGADが精神障害の1つとして認められたのです。
しかし未だに問題があります。GADはうつ病など他の精神障害との合併が高いこと。幼少期から続いていることが多いので性格として考えるべきでは?と考える学者がいることなどです。
治療は精神療法(カウンセリング)と薬物療法に分けられます。GADに対する精神療法としては認知療法(ものの見方や考え方を整理し、その歪みを修正)が一般的とされています。薬物療法ではSSRIという系統の抗うつ薬やタンドスピロンという抗不安薬が長期服用するなら依存性の問題から良いとされていますが、他の抗不安薬も使用します。
もう一度診断基準を見てください。貴方にもあてはまりませんか?
インターネットアンケートなどでは世の中にはGADの人はたくさんいるそうです。しかしGADだけで受診する人はあまり多くなく、うつ病などを併発して初めて心療内科や精神科に受診するようです。
しかし、日常生活に支障をきたすようでしたら早めの受診をお勧めします。
「ママチャランド」3・4月号に掲載